2013-05-31 : 23:53 : admin
# 各国の公用語の話
こんにちは。また久しぶりの登場となります、nyabu です。今日は各国の公用語についてお話ししたいと思います。
公用語とは各国や国際組織において公式なものとして使われている言語のことです。国際連合の場合、英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語が用いられ、これらは国連総会決議として定められています。欧州連合では、加盟国各国の公用語のほとんどが、欧州連合の公用語とされており、欧州連合の規則として定められています。
では、各国の公用語はどうなっているでしょうか。言語は国のかたちに大きな影響を与えるものですから、憲法で決められているのでしょうか。
『世界の憲法集 [第四版]』(有信堂、2009年)をひもといてみますと、多くの国の憲法の中に公用語に関する規定があります。例えば、フランス共和国憲法の場合、第1章「主権」の第2条第1項に「共和国の言語はフランス語である。」と記述されています。スペイン憲法の場合は、第3条第1項にて「カスティリア語は、スペイン国の公用語である。すべてのスペイン人は、これに精通する義務を負い、且つこれを使用する権利を有する。」とされています。そのほか、世界の憲法集に掲載されている憲法の中では、インド憲法、オーストリア連邦憲法、カナダ憲法、フィリピン共和国憲法、ブラジル連邦共和国憲法、ポーランド共和国憲法、ロシア連邦共和国憲法に、公用語の規定がありました。ベルギー国憲法にも言語の記載がありましたが、こちらは公用語云々以前に国のかたち自体が、「言語圏」に基づいて規定されているため、極めて慎重な記述となっており、第30条「ベルギー国内で用いられている言語の使用は任意である。[略]」と記載されています。
近代憲法の代表であるアメリカ合衆国憲法の場合はどうでしょうか。合衆国憲法のどこを見ても、英語を公用語とするとの記述はありません。
実は、アメリカでは連邦レベルでの公用語の規定はなく、州レベルで公用語が規定されている場合があるという状況にあるのです。その州についてもすべての州が公用語を規定しているわけではなく31州にとどまっています。そのため、英語を公用語にせよとの運動があり、昨年2012年の大統領選挙に際して、共和党候補のロムニー氏の主張の中にも「英語を公用語にする」というものがありました。これは英語以外の言語を日常的に使う層が増えてきたこととも関係しているのかもしれません。英語を公用語にすると主張しつつも、ロムニー陣営はスペイン語層を無視するわけにもいかず、スペイン語のマニフェストも作成したそうですが。
ところでお膝元の日本の場合はどうでしょう。
日本国憲法を読んでみますと、公用語は日本語であるという記述はありません。実は個別の法律もなく、裁判は日本語で行うという規定があるだけなのだそうです。とはいえ、学校で「国語」として学ぶのは日本語ですし、行政文書も日本語で作成されていますから、実質的に日本語が公用語である事には違いありません。アメリカの場合と同様に、日本の場合も圧倒的に日本語話者が多いため、わざわざ公用語を規定する必要はなかったのでしょう。現在でも日本語話者が圧倒的に多いわけですが、地域によっては外国語話者、それも英語以外の外国語話者が多い地域もあるようで、そういった地域の行政活動においては英語以外への対応も積極的に行われているようです。
さも当然のように日本語は日本の公用語と思いがちですが、存外その根拠は実状に依存しているわけです。
公用語とは各国や国際組織において公式なものとして使われている言語のことです。国際連合の場合、英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語が用いられ、これらは国連総会決議として定められています。欧州連合では、加盟国各国の公用語のほとんどが、欧州連合の公用語とされており、欧州連合の規則として定められています。
では、各国の公用語はどうなっているでしょうか。言語は国のかたちに大きな影響を与えるものですから、憲法で決められているのでしょうか。
『世界の憲法集 [第四版]』(有信堂、2009年)をひもといてみますと、多くの国の憲法の中に公用語に関する規定があります。例えば、フランス共和国憲法の場合、第1章「主権」の第2条第1項に「共和国の言語はフランス語である。」と記述されています。スペイン憲法の場合は、第3条第1項にて「カスティリア語は、スペイン国の公用語である。すべてのスペイン人は、これに精通する義務を負い、且つこれを使用する権利を有する。」とされています。そのほか、世界の憲法集に掲載されている憲法の中では、インド憲法、オーストリア連邦憲法、カナダ憲法、フィリピン共和国憲法、ブラジル連邦共和国憲法、ポーランド共和国憲法、ロシア連邦共和国憲法に、公用語の規定がありました。ベルギー国憲法にも言語の記載がありましたが、こちらは公用語云々以前に国のかたち自体が、「言語圏」に基づいて規定されているため、極めて慎重な記述となっており、第30条「ベルギー国内で用いられている言語の使用は任意である。[略]」と記載されています。
近代憲法の代表であるアメリカ合衆国憲法の場合はどうでしょうか。合衆国憲法のどこを見ても、英語を公用語とするとの記述はありません。
実は、アメリカでは連邦レベルでの公用語の規定はなく、州レベルで公用語が規定されている場合があるという状況にあるのです。その州についてもすべての州が公用語を規定しているわけではなく31州にとどまっています。そのため、英語を公用語にせよとの運動があり、昨年2012年の大統領選挙に際して、共和党候補のロムニー氏の主張の中にも「英語を公用語にする」というものがありました。これは英語以外の言語を日常的に使う層が増えてきたこととも関係しているのかもしれません。英語を公用語にすると主張しつつも、ロムニー陣営はスペイン語層を無視するわけにもいかず、スペイン語のマニフェストも作成したそうですが。
ところでお膝元の日本の場合はどうでしょう。
日本国憲法を読んでみますと、公用語は日本語であるという記述はありません。実は個別の法律もなく、裁判は日本語で行うという規定があるだけなのだそうです。とはいえ、学校で「国語」として学ぶのは日本語ですし、行政文書も日本語で作成されていますから、実質的に日本語が公用語である事には違いありません。アメリカの場合と同様に、日本の場合も圧倒的に日本語話者が多いため、わざわざ公用語を規定する必要はなかったのでしょう。現在でも日本語話者が圧倒的に多いわけですが、地域によっては外国語話者、それも英語以外の外国語話者が多い地域もあるようで、そういった地域の行政活動においては英語以外への対応も積極的に行われているようです。
さも当然のように日本語は日本の公用語と思いがちですが、存外その根拠は実状に依存しているわけです。
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2012-09-25 : 23:51 : admin
# 諸国の点字の話
こんにちは。久しぶりの登場となります、nyabu です。以前学習塾の講師をしていた際、中学生の英語の教科書に点字の話が書かれていたことを何となく思い出しまして、諸国の点字事情はどうなってるのかとちょっと調べてみたので、お話しさせてください。
点字は英語でBrailleと呼ばれています。これは開発者であるフランス人のLouis Brailleの名前からとったものなのだそうです。ですから、もちろんフランス語でもBrailleで、こちらが本家となるわけですね。アルファベットを使っている国々ではたいてい、点字はBrailleとよばれているようです。
文字を点などで表すというアイディア自体は古くにあったようですが、現在の横2-縦3の合計6つの点を1マスとして1文字が表される6点式の点字は、19世紀に入ってBraille氏が発案したものに始まり、この6点式が世界中で使われるようになったのだそうです。
●●
●●
●●
こんな具合で1文字になり、それぞれの点が盛り上がった状態か、平らな状態かで区別されていきます。
さて、諸国での使われ方ですが、発祥の地フランス語の場合、あまり使われない"w"の文字を除く25文字のアルファベットと、そのほかフランス語に特有のアクセント記号がついている文字が割り当てられています。
英語の場合は、フランス語の点字を元に、削られていた"w"が加えられて、フランス語特有の文字が割り当てられている部分には接続詞や前置詞、よく出てくる文字並び(-ing等)が割り当てられことになりました。
では、アルファベット文字圏とは異なる日本語の場合どうなるかと言いますと、6点を使ってまずはひらがなが割り当てられています。50音を表すには1マス6点の組み合わせで足りているのですが、濁音や拗音まで表すとなると足りなくなるため、それぞれのひらがなに当たる点字の前に、濁音を表す記号や拗音を表す記号が付されるそうです。また数字やアルファベットは、ひらがなの場合配列が重なってしまうため、数字を表す記号やアルファベットを表す記号が手前に付されて区別されるそうです。日本語の場合、かなについてもパターンが多いですし、アルファベットも使いますから、1マスだけで表すのは難しい部分も多いようです。
また漢字圏である中国語はどうなっているのかなと調べてみますと、ローマ字表記であるピンインにしてから、それぞれの発音に合わせる形で点字にしているのだそうで、こちらも2マス使って表すことが多いようです。
このように、基本的に点字というものは表音文字になっていると理解してよいようですが、各国の事情に合わせてそれぞれ工夫されているわけです。
6つの点が盛り上がるか盛り上がらないかで表す方法を考えてみると、その組み合わせは単純計算で2の6乗つまり、64通り考えられるわけです。しかし、そう簡単にはいきません。まず、すべてが平らなものは省かれますし、どれか1つだけが盛り上がっている状態についても6通り考えられますが、単独で触った場合、どの点が盛り上がっているのかわからないためそれらは1種類しか使わないことになります。もちろん複数セットで使った場合にはどの位置が盛り上がっているのか相対的にわかるはずですから、組み合わせで使う場合には利用可能となります。組み合わせまで考えて、利用可能性を考えてみると、なんだかややこしい数学の問題を考えているような気分になってきますね。実際、日本語や中国語のように、アルファベット圏に比べて文字パターンが多くなる地域での点字の開発はこういったことに頭を悩ませたのだろうなと思います。そして、この点を盛り上がらせるか平らにするかというのは、0か1かの2進数でデータを処理するコンピュータの考え方に似ているところがあります。情報を0/1で表すというコンピュータの考え方は、実は点字という形でコンピュータよりも先に実現していたわけですね。
点字は英語でBrailleと呼ばれています。これは開発者であるフランス人のLouis Brailleの名前からとったものなのだそうです。ですから、もちろんフランス語でもBrailleで、こちらが本家となるわけですね。アルファベットを使っている国々ではたいてい、点字はBrailleとよばれているようです。
文字を点などで表すというアイディア自体は古くにあったようですが、現在の横2-縦3の合計6つの点を1マスとして1文字が表される6点式の点字は、19世紀に入ってBraille氏が発案したものに始まり、この6点式が世界中で使われるようになったのだそうです。
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こんな具合で1文字になり、それぞれの点が盛り上がった状態か、平らな状態かで区別されていきます。
さて、諸国での使われ方ですが、発祥の地フランス語の場合、あまり使われない"w"の文字を除く25文字のアルファベットと、そのほかフランス語に特有のアクセント記号がついている文字が割り当てられています。
英語の場合は、フランス語の点字を元に、削られていた"w"が加えられて、フランス語特有の文字が割り当てられている部分には接続詞や前置詞、よく出てくる文字並び(-ing等)が割り当てられことになりました。
では、アルファベット文字圏とは異なる日本語の場合どうなるかと言いますと、6点を使ってまずはひらがなが割り当てられています。50音を表すには1マス6点の組み合わせで足りているのですが、濁音や拗音まで表すとなると足りなくなるため、それぞれのひらがなに当たる点字の前に、濁音を表す記号や拗音を表す記号が付されるそうです。また数字やアルファベットは、ひらがなの場合配列が重なってしまうため、数字を表す記号やアルファベットを表す記号が手前に付されて区別されるそうです。日本語の場合、かなについてもパターンが多いですし、アルファベットも使いますから、1マスだけで表すのは難しい部分も多いようです。
また漢字圏である中国語はどうなっているのかなと調べてみますと、ローマ字表記であるピンインにしてから、それぞれの発音に合わせる形で点字にしているのだそうで、こちらも2マス使って表すことが多いようです。
このように、基本的に点字というものは表音文字になっていると理解してよいようですが、各国の事情に合わせてそれぞれ工夫されているわけです。
6つの点が盛り上がるか盛り上がらないかで表す方法を考えてみると、その組み合わせは単純計算で2の6乗つまり、64通り考えられるわけです。しかし、そう簡単にはいきません。まず、すべてが平らなものは省かれますし、どれか1つだけが盛り上がっている状態についても6通り考えられますが、単独で触った場合、どの点が盛り上がっているのかわからないためそれらは1種類しか使わないことになります。もちろん複数セットで使った場合にはどの位置が盛り上がっているのか相対的にわかるはずですから、組み合わせで使う場合には利用可能となります。組み合わせまで考えて、利用可能性を考えてみると、なんだかややこしい数学の問題を考えているような気分になってきますね。実際、日本語や中国語のように、アルファベット圏に比べて文字パターンが多くなる地域での点字の開発はこういったことに頭を悩ませたのだろうなと思います。そして、この点を盛り上がらせるか平らにするかというのは、0か1かの2進数でデータを処理するコンピュータの考え方に似ているところがあります。情報を0/1で表すというコンピュータの考え方は、実は点字という形でコンピュータよりも先に実現していたわけですね。
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2012-05-16 : 23:59 : admin
# 本の奥付のはなし
こんにちは。本日は急遽、水曜担当の T さんに代わり nyabu です。最近、洋書・和書が混在する大量の書籍を整理するという作業に従事しており、今回はそのとき気付いたことをお話ししたいと思います。
みなさんは、手元にある本が何年に発行されたか調べようと思ったら本の最初と最後、どちらを開こうとしますか?
たいていの方は本の最後のほうを開くのではないでしょうか。和書の場合、たいていは本の最後に出版年や出版社情報が載っていますから、そこを探しに行くことになります。最後のほうに載っていることもあって、この書誌情報のことを「奥付」といいますよね。
和書の奥付が制度化されたのは江戸時代。時代劇でも有名な大岡忠相(いわゆる大岡越前ですね)の命によって書誌情報掲載が義務化されたことに始まるようです。このとき書誌情報を「奥書」に記すよう御触れがあったため、巻末に書誌情報が掲載されるようになったとのことです。
ところが、洋書の場合は書誌情報が巻末に掲載されていることがほとんどです。つまり本の冒頭、表紙をめくって本のタイトルや筆者の名前が書いてある扉のページの裏側にあるということです。
今回整理してきた洋物の書籍は、英語のみならず、フランス語、ドイツ語、スペイン語の書籍などもありましたが、みな書誌情報の位置は扉のページの裏になっていることがほとんどでした。言語が違っても欧州文化圏で図書の構造の形式は共通しているのかもしれません。一方、中国語の書籍も見ましたが、こちらはこちらでやはり英語の本なんかと同じように扉の後ろに書誌情報が書かれていることが多かったです。
そこで疑問に思ったのが、どうしてこのような違いがあるのだろうか、ということでした。残念ながら洋書の場合なぜ冒頭に書誌情報が掲載されるようになったのかすぐにははっきり分かりませんでした。きっと何かしらの経緯があるのだろうと思うのですが、私の疑問がマニアックすぎるのでしょうか。
ちなみにこういった書籍の構造やら、どういった材料で書籍が作られているのかなどを含めて書籍を対象とした「書誌学(bibliography)」という学問の分野があるようで、なかなか奥深そうです。これだけ大量の書籍を扱っていると実務レベルでは難儀しますが、書誌情報などがバラバラなのもそれはそれで世の中では学問として成立するのだと思うと感心します。
みなさんは、手元にある本が何年に発行されたか調べようと思ったら本の最初と最後、どちらを開こうとしますか?
たいていの方は本の最後のほうを開くのではないでしょうか。和書の場合、たいていは本の最後に出版年や出版社情報が載っていますから、そこを探しに行くことになります。最後のほうに載っていることもあって、この書誌情報のことを「奥付」といいますよね。
和書の奥付が制度化されたのは江戸時代。時代劇でも有名な大岡忠相(いわゆる大岡越前ですね)の命によって書誌情報掲載が義務化されたことに始まるようです。このとき書誌情報を「奥書」に記すよう御触れがあったため、巻末に書誌情報が掲載されるようになったとのことです。
ところが、洋書の場合は書誌情報が巻末に掲載されていることがほとんどです。つまり本の冒頭、表紙をめくって本のタイトルや筆者の名前が書いてある扉のページの裏側にあるということです。
今回整理してきた洋物の書籍は、英語のみならず、フランス語、ドイツ語、スペイン語の書籍などもありましたが、みな書誌情報の位置は扉のページの裏になっていることがほとんどでした。言語が違っても欧州文化圏で図書の構造の形式は共通しているのかもしれません。一方、中国語の書籍も見ましたが、こちらはこちらでやはり英語の本なんかと同じように扉の後ろに書誌情報が書かれていることが多かったです。
そこで疑問に思ったのが、どうしてこのような違いがあるのだろうか、ということでした。残念ながら洋書の場合なぜ冒頭に書誌情報が掲載されるようになったのかすぐにははっきり分かりませんでした。きっと何かしらの経緯があるのだろうと思うのですが、私の疑問がマニアックすぎるのでしょうか。
ちなみにこういった書籍の構造やら、どういった材料で書籍が作られているのかなどを含めて書籍を対象とした「書誌学(bibliography)」という学問の分野があるようで、なかなか奥深そうです。これだけ大量の書籍を扱っていると実務レベルでは難儀しますが、書誌情報などがバラバラなのもそれはそれで世の中では学問として成立するのだと思うと感心します。
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2012-04-17 : 23:47 : admin
# 翻訳の難しい言葉
2年ぶりの登場となります、nyabuです。
今日は翻訳が難しい言葉の話をさせてください。
今、わたしたちの周りには片仮名の言葉が多く流布しています。いわゆる外来語のことなのですが、これらは単純化すると二種類に分けることができると思います。一つは日本語に良い表現がないため片仮名のまま取り込まれている言葉。もう一方は、日本語に対応する表現を作り出せるにもかかわらず、片仮名でそのまま取り込まれた言葉です。
この単純化には実は問題があって、言語を超えてしまうと実は全く同じ意味で翻訳することは不可能であるから云々と話をややこしくすることが出来るのですが、ここで言いたいことの本意とは逸れてしまうので、まあここはちょっと単純化した前提でお話しさせてください。
さてさて、外来語の中で日本語に良い表現がないため、片仮名にしてそのまま取り込まれる言葉というと「エネルギー」という言葉を挙げることが出来ますね。もちろん他にも沢山あると思いますし、みなさんそれぞれ思い当たる言葉があるでしょう。専門的な用語になるほど、片仮名のまま持って来ざるを得ないような状況が生じるのかなと思ったりもします。コンピュータ関連の言葉ともなると、下手に日本語にしてしまうとかえって訳が分からなくなってしまう気もします。
日本語の中の外来語という話とは逆に、外国語に取り込まれた日本語というのも沢山あります。みなさんもすぐに思いつくでしょうが、スシ、ゲイシャ、サムライ、ワビ、サビ等々いろいろ挙げることが出来ます。ちょっとひねったところですとウマミというのもそういった類の言葉と聞いたことがあります。日本文化に密接に絡む言葉は、なかなか外国語に翻訳することが難しく、そのまま輸出されていくのでしょうね。
外国語に取り込まれている日本語ですが、その一例として最近ちょっとおもしろい話を聞いたので紹介させてください。
現在、国際リニアコライダー計画という非常に大規模な素粒子研究のための実験装置の建設が議論されています。この建設は日米欧他多くの国々の関与で建設することを目指して議論が進められています。この実験装置の詳細は省くとして、この建設には長いトンネルを掘る必要があります。建設候補地の地質の特性に応じていろいろなトンネルの設計が提案されているそうなのですが、日本に建設する場合には、ということで提案された形がかまぼこ型のトンネルでした。そして、このかまぼこ型トンネルなのですが、英語にこの形を上手く表す表現が無かったということで、国際会議において「カマボコ」という言葉がそのまま使われたそうです。
英語でまじめに会議しながら「カマボコ」という言葉が飛び交っていたと想像するとちょっとおもしろいですね。
今日は翻訳が難しい言葉の話をさせてください。
今、わたしたちの周りには片仮名の言葉が多く流布しています。いわゆる外来語のことなのですが、これらは単純化すると二種類に分けることができると思います。一つは日本語に良い表現がないため片仮名のまま取り込まれている言葉。もう一方は、日本語に対応する表現を作り出せるにもかかわらず、片仮名でそのまま取り込まれた言葉です。
この単純化には実は問題があって、言語を超えてしまうと実は全く同じ意味で翻訳することは不可能であるから云々と話をややこしくすることが出来るのですが、ここで言いたいことの本意とは逸れてしまうので、まあここはちょっと単純化した前提でお話しさせてください。
さてさて、外来語の中で日本語に良い表現がないため、片仮名にしてそのまま取り込まれる言葉というと「エネルギー」という言葉を挙げることが出来ますね。もちろん他にも沢山あると思いますし、みなさんそれぞれ思い当たる言葉があるでしょう。専門的な用語になるほど、片仮名のまま持って来ざるを得ないような状況が生じるのかなと思ったりもします。コンピュータ関連の言葉ともなると、下手に日本語にしてしまうとかえって訳が分からなくなってしまう気もします。
日本語の中の外来語という話とは逆に、外国語に取り込まれた日本語というのも沢山あります。みなさんもすぐに思いつくでしょうが、スシ、ゲイシャ、サムライ、ワビ、サビ等々いろいろ挙げることが出来ます。ちょっとひねったところですとウマミというのもそういった類の言葉と聞いたことがあります。日本文化に密接に絡む言葉は、なかなか外国語に翻訳することが難しく、そのまま輸出されていくのでしょうね。
外国語に取り込まれている日本語ですが、その一例として最近ちょっとおもしろい話を聞いたので紹介させてください。
現在、国際リニアコライダー計画という非常に大規模な素粒子研究のための実験装置の建設が議論されています。この建設は日米欧他多くの国々の関与で建設することを目指して議論が進められています。この実験装置の詳細は省くとして、この建設には長いトンネルを掘る必要があります。建設候補地の地質の特性に応じていろいろなトンネルの設計が提案されているそうなのですが、日本に建設する場合には、ということで提案された形がかまぼこ型のトンネルでした。そして、このかまぼこ型トンネルなのですが、英語にこの形を上手く表す表現が無かったということで、国際会議において「カマボコ」という言葉がそのまま使われたそうです。
英語でまじめに会議しながら「カマボコ」という言葉が飛び交っていたと想像するとちょっとおもしろいですね。
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2010-07-05 : 12:10 : admin
SWIFTで翻訳のお手伝いをさせていただいております nyabu です。
以前より、何か書いて欲しいとTokoさんより依頼されていたのですが、今回ちょっとばかり筆が滑ってしまったので、勢いでこうして投稿させていただきます。
2010年6月13日22時51分、日本の小惑星探査機「はやぶさ」が地球に戻ってきました。テレビや新聞で、はやぶさが大気圏突入により燃え尽きた際に、美しく輝いた場面をご覧になった方も多いかと思います。
はやぶさは、多くの人々に見守られて散っていきました。テレビでの生中継こそかないませんでしたが、インターネットを通じた中継では、生でその瞬間を見ることができ、中継を担当していた側の回線がパンクせんばかりの人気であったようです。このようはやぶさの人気は、それ自体が先進的なプロジェクトであること、数々の困難を克服するというドラマティックな展開があったこともさることながら、キャラクター化され、愛着を持たれたことも、大きいと言われています。
『はやぶさ君の冒険日誌』という冊子があります。宇宙航空研究開発機構(JAXA)職員の方が、はやぶさにより親しんでもらおうと企画したものだそうです。この中で、はやぶさ"君"が一人称で、その旅路を語っています。
キャラクター化と言えば、twitter上に
はやぶさのアカウント(http://twitter.com/Hayabusa_JAXA)
があり、運用スタッフの方がつぶやいたり、はたまた、はやぶさ自身がつぶやくようなこともあります。最近では、2010年5月21日朝に打ち上げられた
金星探査機「あかつき」(http://twitter.com/Akatsuki_JAXA)や
ソーラー電力セイル実証機「イカロス」(http://twitter.com/ikaroskun)
も一人称で頻繁につぶやいています。
宇宙機のような単なる機械があたかも意思を持ってしゃべっているような演出をするのは、キャラクタービジネスに強い日本の得意技かと思っていたのですが、どうやらそうではないことが、はやぶさアカウントのつぶやきで紹介されていました。中でも有名だと思われるのが、NASAが33年にわたり運用し、現在太陽系を脱出しつつある
ボイジャー2号(http://twitter.com/Voyager2)
や、驚くべき宇宙の姿を我々に提示してくれている
ハッブル宇宙望遠鏡(http://twitter.com/IamHubble)
でしょうか。
とりわけ、ボイジャー2号とはやぶさはtwitter上でエールを交換し、はやぶさの帰還に際しては、ボイジャー2号から祝福のコメントがありました。実際には運用スタッフの人が書き込んでいるのだと分かってはいても、そんなやりとりを見ていると、本当に宇宙機がそんな会話をしているのではないかと錯覚しそうになるものです。
今後も、このように一人称で自己紹介する宇宙機がたくさん出てくることでしょう。宇宙開発をより身近なものと感じてもらう手段としては、なかなか優れていると思います。しかし、自分で語り出す宇宙機というのは、単なる広報手段であるだけではなく、宇宙開発に挑む世界中の科学者、技術者達の情熱と、宇宙機に対する愛情があふれ出した結果なのだと、そう思わずにはいられないのです。
以前より、何か書いて欲しいとTokoさんより依頼されていたのですが、今回ちょっとばかり筆が滑ってしまったので、勢いでこうして投稿させていただきます。
2010年6月13日22時51分、日本の小惑星探査機「はやぶさ」が地球に戻ってきました。テレビや新聞で、はやぶさが大気圏突入により燃え尽きた際に、美しく輝いた場面をご覧になった方も多いかと思います。
はやぶさは、多くの人々に見守られて散っていきました。テレビでの生中継こそかないませんでしたが、インターネットを通じた中継では、生でその瞬間を見ることができ、中継を担当していた側の回線がパンクせんばかりの人気であったようです。このようはやぶさの人気は、それ自体が先進的なプロジェクトであること、数々の困難を克服するというドラマティックな展開があったこともさることながら、キャラクター化され、愛着を持たれたことも、大きいと言われています。
『はやぶさ君の冒険日誌』という冊子があります。宇宙航空研究開発機構(JAXA)職員の方が、はやぶさにより親しんでもらおうと企画したものだそうです。この中で、はやぶさ"君"が一人称で、その旅路を語っています。
キャラクター化と言えば、twitter上に
はやぶさのアカウント(http://twitter.com/Hayabusa_JAXA)
があり、運用スタッフの方がつぶやいたり、はたまた、はやぶさ自身がつぶやくようなこともあります。最近では、2010年5月21日朝に打ち上げられた
金星探査機「あかつき」(http://twitter.com/Akatsuki_JAXA)や
ソーラー電力セイル実証機「イカロス」(http://twitter.com/ikaroskun)
も一人称で頻繁につぶやいています。
宇宙機のような単なる機械があたかも意思を持ってしゃべっているような演出をするのは、キャラクタービジネスに強い日本の得意技かと思っていたのですが、どうやらそうではないことが、はやぶさアカウントのつぶやきで紹介されていました。中でも有名だと思われるのが、NASAが33年にわたり運用し、現在太陽系を脱出しつつある
ボイジャー2号(http://twitter.com/Voyager2)
や、驚くべき宇宙の姿を我々に提示してくれている
ハッブル宇宙望遠鏡(http://twitter.com/IamHubble)
でしょうか。
とりわけ、ボイジャー2号とはやぶさはtwitter上でエールを交換し、はやぶさの帰還に際しては、ボイジャー2号から祝福のコメントがありました。実際には運用スタッフの人が書き込んでいるのだと分かってはいても、そんなやりとりを見ていると、本当に宇宙機がそんな会話をしているのではないかと錯覚しそうになるものです。
今後も、このように一人称で自己紹介する宇宙機がたくさん出てくることでしょう。宇宙開発をより身近なものと感じてもらう手段としては、なかなか優れていると思います。しかし、自分で語り出す宇宙機というのは、単なる広報手段であるだけではなく、宇宙開発に挑む世界中の科学者、技術者達の情熱と、宇宙機に対する愛情があふれ出した結果なのだと、そう思わずにはいられないのです。
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