2015-01-09 : 23:59 : admin
明けましておめでとうございます。Akiko です。
年末に歌舞伎町の新宿ミラノ座に通っていました。1956年に開館、1064席という座席数と巨大スクリーンを持つ日本最大級の映画館として愛されましたが、シネコンが主流となるなか、観客減で12月31日に閉館することになりました。さよなら興行では、『アラビアのロレンス』『インファナル・アフェア』『戦場のメリークリスマス』など、ミラノ座を彩ったヒット作が上映されました。

わたしは何を観に行ったかと言いますと…
『E.T.』(1982年/20周年記念特別版)
『マトリックス』(1999)
『荒野の七人』(1960)
言わずと知れた名作映画です!
そして、『荒野の七人』をのぞき、同時代的な大ヒット映画にもかかわらず、いままで見のがしていた映画です。
最後の上映作品『E.T.』ではものすごい列に並んで、場内に入ると既に満席だったので、通路の階段に腰掛けて観ました。シネコンでは立見はないので、これもこの先訪れないかもしれない貴重な体験です。
そしてみた『E.T.』のすばらしさといったら!
自転車が空を飛び、枯れていた植木鉢の花が蘇る、映画のマジックがキラキラと詰め込まれていた大傑作でした。(今更ながら…)
そして、異質な他者を受け入れるこの寓話の懐の深さは、今も世界の現実に響くものでした。
終映後は、観客全員で(立見も含めて約1400人とニュースになっていました)クラッカーを鳴らして、フィナーレを見届けました。
いまさらながら『マトリックス』にも興奮して、映画はやっぱり、ヒットした時代に見るべきものだな…と、思いました。時間が経っても作品自体の素晴らしさは変わらないのですが、時代の空気とともにその興奮を味わうのが、なんといっても体験であり、「生きている」ということなのかなあという気がします。
来月にはアカデミー賞授賞式もありますし、話題作はやっぱりチェックしようと思います!
そして、本年もどうぞ宜しくお願い致します。

年末に歌舞伎町の新宿ミラノ座に通っていました。1956年に開館、1064席という座席数と巨大スクリーンを持つ日本最大級の映画館として愛されましたが、シネコンが主流となるなか、観客減で12月31日に閉館することになりました。さよなら興行では、『アラビアのロレンス』『インファナル・アフェア』『戦場のメリークリスマス』など、ミラノ座を彩ったヒット作が上映されました。

わたしは何を観に行ったかと言いますと…
『E.T.』(1982年/20周年記念特別版)
『マトリックス』(1999)
『荒野の七人』(1960)
言わずと知れた名作映画です!
そして、『荒野の七人』をのぞき、同時代的な大ヒット映画にもかかわらず、いままで見のがしていた映画です。
最後の上映作品『E.T.』ではものすごい列に並んで、場内に入ると既に満席だったので、通路の階段に腰掛けて観ました。シネコンでは立見はないので、これもこの先訪れないかもしれない貴重な体験です。
そしてみた『E.T.』のすばらしさといったら!
自転車が空を飛び、枯れていた植木鉢の花が蘇る、映画のマジックがキラキラと詰め込まれていた大傑作でした。(今更ながら…)
そして、異質な他者を受け入れるこの寓話の懐の深さは、今も世界の現実に響くものでした。
終映後は、観客全員で(立見も含めて約1400人とニュースになっていました)クラッカーを鳴らして、フィナーレを見届けました。
いまさらながら『マトリックス』にも興奮して、映画はやっぱり、ヒットした時代に見るべきものだな…と、思いました。時間が経っても作品自体の素晴らしさは変わらないのですが、時代の空気とともにその興奮を味わうのが、なんといっても体験であり、「生きている」ということなのかなあという気がします。
来月にはアカデミー賞授賞式もありますし、話題作はやっぱりチェックしようと思います!
そして、本年もどうぞ宜しくお願い致します。

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2014-12-26 : 23:59 : admin
こんにちは、Akikoです。
あっという間に年末になりました。この1年間、スイフトでお仕事をさせて頂いたことはとても幸運な出来事の一つだったと改めて思います。
締め切りは苦しいですが、英語に向き合っているのはとても楽しいです。もっともっと、訳出の精度を上げて、水のようにするっと入っていくように翻訳できたら最高です。
水のようにするっと入っていく、と言えば、同時通訳者の長井鞠子さんがいらっしゃいます。以前、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介された方で、サミットから貿易交渉、東京オリンピック招致に至るまで、過去40年以上日本の外交を支えてきたと言われる、神様のような方です。同時通訳で、「言うは易し、行うは難し、であります」なんて、すらっと訳される方です。
番組の中では、長井さんの実際の通訳の現場だけでなく、単語リストを丹念に下準備したり、日本語の力を研ぎ澄ますために和歌の勉強をしたりする、舞台裏まで捉えていました。
そのときは単に、あれだけ英語が出来る方が、日本語までさらに磨きをかけている!とひたすら衝撃を受けていただけだったのですが、やがてもっと奥深いものがあるのではないか?と思うようになりました。
そして、ふと、昔読んだ白洲正子の「お能」という本に、書かれていたことを思いだしたのです。
お能の光が赤であるとする。千の観客はおのおのちがう色を持っている。
お能の原色の赤が舞台から観客へ放射されて、千の観客の色とそれぞれ交わると、青は紫となり、白は桃色となる…というようなことが書かれているくだりです。
そして、このように続きます。
「この場合、千の観客のなかにたったひとり、もし色をもたない人がいたとしたら、その人ダケがお能と同じ「原色の赤」を感じることができるはずです。この人の心は鏡のように、水のように、ありのままにお能をうつすことができるのです」(原文のまま引用)
「ある一個人の青が原色の赤と交わるとき、世にも美しい紫となるかも知れません。しかしそれは「お能をたのしむこと」であって、「お能を知ること」ではありません」
ああ、もしかしたら、長井さんは、話者の想い=色をそのまま映し出そうとしているのではないか。言葉を磨くのは、元の色に出来るだけ近づける手段ではないか、と思うようになりました。
まだ長井さんのレベルには到底及びもしませんし、理系や経済関連の単語だけでもふうふう言っているわたしですが、少しでも透明になって、ありのままにうつす翻訳が出来るように、精進して行きたいと思います。
どうかよいお年をお迎えください。
そして来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
あっという間に年末になりました。この1年間、スイフトでお仕事をさせて頂いたことはとても幸運な出来事の一つだったと改めて思います。
締め切りは苦しいですが、英語に向き合っているのはとても楽しいです。もっともっと、訳出の精度を上げて、水のようにするっと入っていくように翻訳できたら最高です。
水のようにするっと入っていく、と言えば、同時通訳者の長井鞠子さんがいらっしゃいます。以前、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介された方で、サミットから貿易交渉、東京オリンピック招致に至るまで、過去40年以上日本の外交を支えてきたと言われる、神様のような方です。同時通訳で、「言うは易し、行うは難し、であります」なんて、すらっと訳される方です。
番組の中では、長井さんの実際の通訳の現場だけでなく、単語リストを丹念に下準備したり、日本語の力を研ぎ澄ますために和歌の勉強をしたりする、舞台裏まで捉えていました。
そのときは単に、あれだけ英語が出来る方が、日本語までさらに磨きをかけている!とひたすら衝撃を受けていただけだったのですが、やがてもっと奥深いものがあるのではないか?と思うようになりました。
そして、ふと、昔読んだ白洲正子の「お能」という本に、書かれていたことを思いだしたのです。
お能の光が赤であるとする。千の観客はおのおのちがう色を持っている。
お能の原色の赤が舞台から観客へ放射されて、千の観客の色とそれぞれ交わると、青は紫となり、白は桃色となる…というようなことが書かれているくだりです。
そして、このように続きます。
「この場合、千の観客のなかにたったひとり、もし色をもたない人がいたとしたら、その人ダケがお能と同じ「原色の赤」を感じることができるはずです。この人の心は鏡のように、水のように、ありのままにお能をうつすことができるのです」(原文のまま引用)
「ある一個人の青が原色の赤と交わるとき、世にも美しい紫となるかも知れません。しかしそれは「お能をたのしむこと」であって、「お能を知ること」ではありません」
ああ、もしかしたら、長井さんは、話者の想い=色をそのまま映し出そうとしているのではないか。言葉を磨くのは、元の色に出来るだけ近づける手段ではないか、と思うようになりました。
まだ長井さんのレベルには到底及びもしませんし、理系や経済関連の単語だけでもふうふう言っているわたしですが、少しでも透明になって、ありのままにうつす翻訳が出来るように、精進して行きたいと思います。
どうかよいお年をお迎えください。
そして来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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2014-12-12 : 23:38 : admin
こんにちは、Akikoです。
以前一緒に仕事をしたTくんがフランスに帰国しました。
Tくんは27歳のベトナム系フランス人。パリの超優秀な日本語学校に通う学生で、日本で開催される国際イベントのインターンとして来日していました。
このTくん、見た目は昭和の実直な日本人という感じで、カジュアルOKのオフィスにもかかわらず、毎日ジャケットを着て出勤してきました。Tくんが襟なしの服を着ていたのを見たことがありません。
初めてオフィスにやってきた日、何を飲むかと聞かれて、「お冷やをお願いします」と答えたツワモノであり、「津軽海峡冬景色」から水樹奈々までカラオケのレパートリーは広く、ほぼ画面を見ないで歌えました。もともとエンジニアだったそうでシステム系に強く、こちらが褒めても「いやいや…」と手を振りながら謙遜し、自分のタスクが終わるとすぐに「何かお役に立てることはありますでしょうか?」と聞いてくる、見た目だけでなく心まで実直な人柄の持ち主でした。
ある日のこと。勤勉なTくんが、オフィスに現れません。メールで、「色々な問題が発生して、遅れます。誠に申し訳ありません」と連絡がありました。
色々な問題っていったい??
とみんなたいそう心配をしました。当時Tくんが住んでいたのは埼玉の奥の方で、通勤に一時間半以上かかるところでした。慣れない日本の猛暑で体調を崩してしまったのではないか…。実直なTくんですら耐えかねる職場環境だったのではないか…。これで日本が嫌いになったらどうしよう…。
午後も遅くなって、やっとTくんが申し訳なさそうな顔をしてやってきました。ひたすら謝るTくんの話を聞くには、大事な荷物を預かることになっていて、日時指定をしたものの手違いでその配達が遅れてしまい、家を出ようにも出ることができなかったそうです。
そこまで聞いたら、その大事な荷物とは何か聞きたくなるものが人情というもの。突っ込んで聞いてみると、どこまでも正直なTくんはお茶を濁すこともしません。すぐに、それが コミケで販売する同人誌 と判明しました。印刷所から納品されるのを待っていたそうです。
(そ・れ・は、仕事より大事なミッションだね!)
Tくん担当の指導スタッフがしかるのを傍目に、心の中で叫んだわたしでした。
後日、このTくんがフランスに帰国してから仕上げるという論文の下書きを見せてもらいましたが、J-POPやアニソンなど、いろいろな日本の歌を取り上げてよく使われるキーワードを解析するというもので、たとえばJ-POPだと「希望」「未来」「きみ」「ぼく」という言葉が並び、アニソンだと「運命」「宇宙」「愛」という言葉が並ぶ…というめちゃくちゃ納得、かつ面白い研究でした。
イベント業務は忙しいものでしたが、Tくんも休日は隅田川の花火大会など、友人といろいろなところに出かけていたようです。
「リア充だね」と言うと、また、「いやいや…」と手を振りながら謙遜していました。
日本のボジョレーヌーボーがあまりに高いのでびっくりしていたTくん、クリスマスは家族とゆっくり、美味しいワインを飲みながら過ごすことでしょう。
ちなみに、Tくんは来年すぐまた日本に帰ってくるそうです。
以前一緒に仕事をしたTくんがフランスに帰国しました。
Tくんは27歳のベトナム系フランス人。パリの超優秀な日本語学校に通う学生で、日本で開催される国際イベントのインターンとして来日していました。
このTくん、見た目は昭和の実直な日本人という感じで、カジュアルOKのオフィスにもかかわらず、毎日ジャケットを着て出勤してきました。Tくんが襟なしの服を着ていたのを見たことがありません。
初めてオフィスにやってきた日、何を飲むかと聞かれて、「お冷やをお願いします」と答えたツワモノであり、「津軽海峡冬景色」から水樹奈々までカラオケのレパートリーは広く、ほぼ画面を見ないで歌えました。もともとエンジニアだったそうでシステム系に強く、こちらが褒めても「いやいや…」と手を振りながら謙遜し、自分のタスクが終わるとすぐに「何かお役に立てることはありますでしょうか?」と聞いてくる、見た目だけでなく心まで実直な人柄の持ち主でした。
ある日のこと。勤勉なTくんが、オフィスに現れません。メールで、「色々な問題が発生して、遅れます。誠に申し訳ありません」と連絡がありました。
色々な問題っていったい??
とみんなたいそう心配をしました。当時Tくんが住んでいたのは埼玉の奥の方で、通勤に一時間半以上かかるところでした。慣れない日本の猛暑で体調を崩してしまったのではないか…。実直なTくんですら耐えかねる職場環境だったのではないか…。これで日本が嫌いになったらどうしよう…。
午後も遅くなって、やっとTくんが申し訳なさそうな顔をしてやってきました。ひたすら謝るTくんの話を聞くには、大事な荷物を預かることになっていて、日時指定をしたものの手違いでその配達が遅れてしまい、家を出ようにも出ることができなかったそうです。
そこまで聞いたら、その大事な荷物とは何か聞きたくなるものが人情というもの。突っ込んで聞いてみると、どこまでも正直なTくんはお茶を濁すこともしません。すぐに、それが コミケで販売する同人誌 と判明しました。印刷所から納品されるのを待っていたそうです。
(そ・れ・は、仕事より大事なミッションだね!)
Tくん担当の指導スタッフがしかるのを傍目に、心の中で叫んだわたしでした。
後日、このTくんがフランスに帰国してから仕上げるという論文の下書きを見せてもらいましたが、J-POPやアニソンなど、いろいろな日本の歌を取り上げてよく使われるキーワードを解析するというもので、たとえばJ-POPだと「希望」「未来」「きみ」「ぼく」という言葉が並び、アニソンだと「運命」「宇宙」「愛」という言葉が並ぶ…というめちゃくちゃ納得、かつ面白い研究でした。
イベント業務は忙しいものでしたが、Tくんも休日は隅田川の花火大会など、友人といろいろなところに出かけていたようです。
「リア充だね」と言うと、また、「いやいや…」と手を振りながら謙遜していました。
日本のボジョレーヌーボーがあまりに高いのでびっくりしていたTくん、クリスマスは家族とゆっくり、美味しいワインを飲みながら過ごすことでしょう。
ちなみに、Tくんは来年すぐまた日本に帰ってくるそうです。
2014-11-28 : 23:59 : admin
こんにちは、Akikoです。
先日誕生日を迎えました。
堂々たるアラフォーなのに、ありがたいもので、実家の両親が忘れずいて、いろいろと送ってくれます。
その中にあったのが、

『 もう一度天気待ち 監督・黒澤明とともに 』
という、野上照代さんの本です。
1950年に『羅生門』のスクリプターとして参加、以来、黒澤映画の製作に携わった野上さんの証言は、無類の面白さです。
中でも思わず吹き出してしまったのが、黒澤監督が見た夢を映像化した8つの話からなるオムニバス映画『夢』の中の「鴉」というエピソード。寺尾聰扮する「私」は、ゴッホの絵を見ているうちに、ゴッホの絵の世界の中に入りこんでしまいます。クライマックスは、ゴッホの最後の絵である“荒れもようの空に鴉のむれ飛ぶ麦畑”を再現したシーンですが、なんと、このシーンのために、北海道のゴミ処理場を回って、250羽もの鴉を集めたというのです。しかも、画面いっぱいに鴉を飛び立たせるために、二十個の箱に分けて鴉を入れ、土地のアルバイト40人を使って、本番のために何度も特訓を重ねたそうです。その甲斐あって、当日は寺尾さんのお芝居とも合って、見事タイミングよく鴉が飛び立ったそうです。
今だったら、CGで処理されるようなシーンも、知恵と努力と、人海戦術で乗り切る、この恐るべきエピソードに、圧倒されてしまいました。
この『夢』は、1990年の封切り当時、「監督の夢を見させられる観客の気持ちにもなって」という声もあり、あまり評判は良くなかったように記憶しています。ですが、「赤富士」というエピソードの中で、原発の恐怖を描いていたことが、福島第一原子力発電所事故直後に話題となり、改めてその先見性が大きく注目されました。それ以外にも、この本の中には、盟友・三船敏郎と疎遠になった後年のエピソードや、有名な『蜘蛛巣城』の勝新太郎降板騒動にも触れられています。
出会いがあって別れがある、と言ってしまうにはあまりにも切なくて苦い、人と人との縁のむずかしさ、分かれてしまった道の取り返しのつかなさなども描かれています。
その野上さんが、あとがきでこう書いています。
250羽の鴉を集める、気の遠くなる作業と、その成功を分かち合う現場のエネルギーの眩しさと…。
映画はどこへ向かうのか、わたしたちはどこへ向かうのか、そんなことを考えてしまい、本を読み終えたのでした。
先日誕生日を迎えました。
堂々たるアラフォーなのに、ありがたいもので、実家の両親が忘れずいて、いろいろと送ってくれます。
その中にあったのが、

『 もう一度天気待ち 監督・黒澤明とともに 』
という、野上照代さんの本です。
1950年に『羅生門』のスクリプターとして参加、以来、黒澤映画の製作に携わった野上さんの証言は、無類の面白さです。
中でも思わず吹き出してしまったのが、黒澤監督が見た夢を映像化した8つの話からなるオムニバス映画『夢』の中の「鴉」というエピソード。寺尾聰扮する「私」は、ゴッホの絵を見ているうちに、ゴッホの絵の世界の中に入りこんでしまいます。クライマックスは、ゴッホの最後の絵である“荒れもようの空に鴉のむれ飛ぶ麦畑”を再現したシーンですが、なんと、このシーンのために、北海道のゴミ処理場を回って、250羽もの鴉を集めたというのです。しかも、画面いっぱいに鴉を飛び立たせるために、二十個の箱に分けて鴉を入れ、土地のアルバイト40人を使って、本番のために何度も特訓を重ねたそうです。その甲斐あって、当日は寺尾さんのお芝居とも合って、見事タイミングよく鴉が飛び立ったそうです。
今だったら、CGで処理されるようなシーンも、知恵と努力と、人海戦術で乗り切る、この恐るべきエピソードに、圧倒されてしまいました。
この『夢』は、1990年の封切り当時、「監督の夢を見させられる観客の気持ちにもなって」という声もあり、あまり評判は良くなかったように記憶しています。ですが、「赤富士」というエピソードの中で、原発の恐怖を描いていたことが、福島第一原子力発電所事故直後に話題となり、改めてその先見性が大きく注目されました。それ以外にも、この本の中には、盟友・三船敏郎と疎遠になった後年のエピソードや、有名な『蜘蛛巣城』の勝新太郎降板騒動にも触れられています。
出会いがあって別れがある、と言ってしまうにはあまりにも切なくて苦い、人と人との縁のむずかしさ、分かれてしまった道の取り返しのつかなさなども描かれています。
その野上さんが、あとがきでこう書いています。
今や『映画』と名のつくものは、
フィルムの消滅とともに終焉を告げた。
フィルムの消滅とともに終焉を告げた。
250羽の鴉を集める、気の遠くなる作業と、その成功を分かち合う現場のエネルギーの眩しさと…。
映画はどこへ向かうのか、わたしたちはどこへ向かうのか、そんなことを考えてしまい、本を読み終えたのでした。
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2014-11-14 : 23:59 : admin
こんにちは、Akikoです。
ずいぶんブログからご無沙汰してしまいました。
すっかり寒くなりましたね!
さて、ここのところ、「伝わるコミュニケーションってなんだろう…」と考えています。正確に言うと、「通訳」や「翻訳」を介して、きちんとコミュニケーションをする肝はなんだろう?という、どストレートなテーマです。
先日行われた、某映画祭のクロージングセレモニーの動画中継を見ていた時のこと。
各部門の作品賞、
最優秀男優賞、
最優秀女優賞、
最優秀監督賞、
審査員特別賞、
と、どんどん盛り上がって行きます。
そして、最後の最優秀作品賞の発表を前にして、アメリカ人の審査委員長がアツい講評を語り始めました。
そこで、突如、通訳の声ががらりと変わったのです。
「!?」
画面を前にしたビューアーの皆がおそらく凍りついたと思います。
おそらくトリをつとめるべき、超ベテランの通訳者さんなのかもしれませんが、、、まるで、国会の所信表明演説のような、落ち着きすぎているというより、テンション低すぎる通訳で、一気に盛り下がっていました…。
訳されるのを待っている間、審査委員長の顔が画面に映し出されていました。言葉はともかく、何か大事なものが伝わっていないことは誰にも明らかだったようで、苦虫を噛み潰したような表情をしていました。。
当の通訳者さんにしてみれば大役を粗相なく成し遂げる気持ちが強かったのだと思いますが、その几帳面さが裏目に出た形です。いったい思いが伝わるコミュニケーションって、 なんだろう ?と思ってしまいました。
次回は「翻訳」のケースで考えてみたいと思います!
ずいぶんブログからご無沙汰してしまいました。
すっかり寒くなりましたね!
さて、ここのところ、「伝わるコミュニケーションってなんだろう…」と考えています。正確に言うと、「通訳」や「翻訳」を介して、きちんとコミュニケーションをする肝はなんだろう?という、どストレートなテーマです。
先日行われた、某映画祭のクロージングセレモニーの動画中継を見ていた時のこと。
各部門の作品賞、
最優秀男優賞、
最優秀女優賞、
最優秀監督賞、
審査員特別賞、
と、どんどん盛り上がって行きます。
そして、最後の最優秀作品賞の発表を前にして、アメリカ人の審査委員長がアツい講評を語り始めました。
そこで、突如、通訳の声ががらりと変わったのです。
「!?」
画面を前にしたビューアーの皆がおそらく凍りついたと思います。
おそらくトリをつとめるべき、超ベテランの通訳者さんなのかもしれませんが、、、まるで、国会の所信表明演説のような、落ち着きすぎているというより、テンション低すぎる通訳で、一気に盛り下がっていました…。
訳されるのを待っている間、審査委員長の顔が画面に映し出されていました。言葉はともかく、何か大事なものが伝わっていないことは誰にも明らかだったようで、苦虫を噛み潰したような表情をしていました。。
当の通訳者さんにしてみれば大役を粗相なく成し遂げる気持ちが強かったのだと思いますが、その几帳面さが裏目に出た形です。いったい思いが伝わるコミュニケーションって、 なんだろう ?と思ってしまいました。
次回は「翻訳」のケースで考えてみたいと思います!
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2014-08-22 : 23:48 : admin
# 夏の終わり
こんにちは、Akikoです。
数日前、深夜家に帰って来てポストを開けたら、ジリジリッと蝉がいきなり飛び出してきました。マンションの踊り場の灯りの元でくるくると動き回っています。
ああ、もう夏も終わりなんだな、と感じました。
今年は仕事が忙しかったのですが、なんとか義理の父の眠る新潟に行って、お墓参りをするができました。これをしないとなんだか落ち着かないのです。
とはいえ、わたし自身が先祖を大事にする家庭に育ったかというと、その正反対です。両親はいわゆる団塊の世代で、家には仏壇もなく、墓参りにも行く習慣がありませんでした。保守的な世代への反抗心が強く、「千の風になって」の♪私のお墓の前で 泣かないでください、というフレーズにシンパシーを感じるようで、骨を海に撒いてほしいと言っていたこともあります。(あくまで漠然とした夢だったようで、最近、市営墓地で小さなお墓を買ったらしい)
ですので、わたしがお盆と正月に手を合わせるようになったのは、結婚してからここ十数年あまりのことです。手を10秒ほど合わせて、ここにはいない人を思うひとときの瞬間が、とてもかけがえのないような気持ちにだんだんとなってきました。お墓を水でごしごし洗い、無心になって、古歯ブラシで名前のところに溜まった泥を搔き出します。お寺の方丈さまが、今回はどんなネタで講話をするのかと想像するのも、けっこう楽しいです。
「心があれば、形なんて」と思う親世代と、儀式の中に心を見つけるわたしと。
上と逆のことをやるとしっくりする、よく世代は繰り返すと言うのはこのことなのかなあと思う、夏の終わりでした。
数日前、深夜家に帰って来てポストを開けたら、ジリジリッと蝉がいきなり飛び出してきました。マンションの踊り場の灯りの元でくるくると動き回っています。
ああ、もう夏も終わりなんだな、と感じました。
今年は仕事が忙しかったのですが、なんとか義理の父の眠る新潟に行って、お墓参りをするができました。これをしないとなんだか落ち着かないのです。
とはいえ、わたし自身が先祖を大事にする家庭に育ったかというと、その正反対です。両親はいわゆる団塊の世代で、家には仏壇もなく、墓参りにも行く習慣がありませんでした。保守的な世代への反抗心が強く、「千の風になって」の♪私のお墓の前で 泣かないでください、というフレーズにシンパシーを感じるようで、骨を海に撒いてほしいと言っていたこともあります。(あくまで漠然とした夢だったようで、最近、市営墓地で小さなお墓を買ったらしい)
ですので、わたしがお盆と正月に手を合わせるようになったのは、結婚してからここ十数年あまりのことです。手を10秒ほど合わせて、ここにはいない人を思うひとときの瞬間が、とてもかけがえのないような気持ちにだんだんとなってきました。お墓を水でごしごし洗い、無心になって、古歯ブラシで名前のところに溜まった泥を搔き出します。お寺の方丈さまが、今回はどんなネタで講話をするのかと想像するのも、けっこう楽しいです。
「心があれば、形なんて」と思う親世代と、儀式の中に心を見つけるわたしと。
上と逆のことをやるとしっくりする、よく世代は繰り返すと言うのはこのことなのかなあと思う、夏の終わりでした。
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2014-08-08 : 23:59 : admin
# 韓国で人間観察
こんにちは、Akikoです。
韓国に行って来ました。ソウルに三泊四日の旅です。
ひたすらサウナ&美食の日々を過ごしました。
日本語か英語はほぼ通じるので、旅のサバイバルさはまったくありません。
時差もなく、町並みもどこか日本の雰囲気に似ているので、異国にいるという気もしません。
では何が違うかと言えば、人間です。
地下鉄に乗っても、日本人、韓国人、中国人の微妙な違いはすぐに認識できます。女性は眉毛の形を見ればすぐ分かります。韓国の女性はゆるやかな眉毛の形で、濃く描かずにぼわっとしています。(フィギュアのキム・ヨナ選手みたいな感じ)ストレートか内巻きのつやつやのミディアムヘアが主流です。
男性は、背が高くて、胸板が厚く、VネックのTシャツから筋肉質の腕を出しています。
全員がそうではないですが、ステロタイプなイメージとしては、女性は女性らしく、男性は男性らしい。
街には美容整形の看板があふれ、ちょっといじってきたのか、顔を腫らして絆創膏を貼った女性が普通に町中を歩いています。
また、スキンシップが濃厚で、街では女性同士でも手を組んで歩いているのを見かけます。迷彩服を着た若い兵士が、駅のエスカレーターで彼女と抱き合ってキスしたりしているのも見かけました。
今田耕司みたいな男性と&キレイな女性のカップル、細めの草食男子と若いのにセルライトありまくりの超太った女性とのカップルがベタベタしている様子も見かけました。日本ではあまり見かけない不釣り合いな組み合わせを見て、「中身を重視しているんだね」と息子がぽつりと言いました。
また、韓国では一人で食事している人はおらず、たいていグループで食事をしているので、ひたすら観察をしては、「あれは若夫婦+奥さんの両親」「ヘアサロンの従業員の女性+オーナーの男性」「大学の同級生」「オタク仲間」など、勝手に人間関係を想像して楽しんでいました。
旅の中で一番楽しそうに見えたのが、焼肉屋さんで談笑していたオタクっぽい男性3人組でした。となりのテーブルの高身長+2ブロックのヘアスタイルのイケメン軍団がスマホばっかりいじっていたのと対照的に、オタク集団は顔を真っ赤にしてお酒をガンガン飲みながら、笑い転げていました。
もしも韓国の人が日本を見たら、どんな風に映るのかな…
ひとりご飯をしている人は寂しそうに見えるのかな、それとも、それも一つの幸せに見えることもあるのだろうかと、ふと思いました。
ではでは、また!
<仁川空港へ向かう車窓からの風景>
続き▽
韓国に行って来ました。ソウルに三泊四日の旅です。
ひたすらサウナ&美食の日々を過ごしました。
日本語か英語はほぼ通じるので、旅のサバイバルさはまったくありません。
時差もなく、町並みもどこか日本の雰囲気に似ているので、異国にいるという気もしません。
では何が違うかと言えば、人間です。
地下鉄に乗っても、日本人、韓国人、中国人の微妙な違いはすぐに認識できます。女性は眉毛の形を見ればすぐ分かります。韓国の女性はゆるやかな眉毛の形で、濃く描かずにぼわっとしています。(フィギュアのキム・ヨナ選手みたいな感じ)ストレートか内巻きのつやつやのミディアムヘアが主流です。
男性は、背が高くて、胸板が厚く、VネックのTシャツから筋肉質の腕を出しています。
全員がそうではないですが、ステロタイプなイメージとしては、女性は女性らしく、男性は男性らしい。
街には美容整形の看板があふれ、ちょっといじってきたのか、顔を腫らして絆創膏を貼った女性が普通に町中を歩いています。
また、スキンシップが濃厚で、街では女性同士でも手を組んで歩いているのを見かけます。迷彩服を着た若い兵士が、駅のエスカレーターで彼女と抱き合ってキスしたりしているのも見かけました。
今田耕司みたいな男性と&キレイな女性のカップル、細めの草食男子と若いのにセルライトありまくりの超太った女性とのカップルがベタベタしている様子も見かけました。日本ではあまり見かけない不釣り合いな組み合わせを見て、「中身を重視しているんだね」と息子がぽつりと言いました。
また、韓国では一人で食事している人はおらず、たいていグループで食事をしているので、ひたすら観察をしては、「あれは若夫婦+奥さんの両親」「ヘアサロンの従業員の女性+オーナーの男性」「大学の同級生」「オタク仲間」など、勝手に人間関係を想像して楽しんでいました。
旅の中で一番楽しそうに見えたのが、焼肉屋さんで談笑していたオタクっぽい男性3人組でした。となりのテーブルの高身長+2ブロックのヘアスタイルのイケメン軍団がスマホばっかりいじっていたのと対照的に、オタク集団は顔を真っ赤にしてお酒をガンガン飲みながら、笑い転げていました。
もしも韓国の人が日本を見たら、どんな風に映るのかな…
ひとりご飯をしている人は寂しそうに見えるのかな、それとも、それも一つの幸せに見えることもあるのだろうかと、ふと思いました。
ではでは、また!
<仁川空港へ向かう車窓からの風景>
続き▽
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2014-07-11 : 23:59 : admin
こんにちは、Akiko です。
以前に(2014年5月16日)、スウェーデン映画『シンプル・シモン』のお知らせさせて頂きましたが、おかげさまでなんとロングラン中です!
アスペルガー症候群の主人公・シモンの眼に映る世界をユーモアたっぷりに描き出した、キュートでハッピーな物語です。
シンプル・シモン公式サイト
http://www.simon-movie.jp/index.html
実は7月12日(土)イベントがあります。
一般社団法人“Get in touch”の理事長としてご活躍中の女優の 東ちづる さんをお招きしてのトークショーです。ご来場をお待ち致しております!
・ ゲスト:東ちづるさん (女優/一般社団法人Get in touch理事長)
・ 日時:7月12日(土) 『シンプル・シモン』21:10の回上映前
※上映前の開催になります。終映は23:00を予定しております。
・ 場所:ユーロスペース
「一般社団法人Get in touch」について
誰のことも排除せず、いろいろな人が、もっと自然に、もっと気楽に、もっと自由に一緒にいられる、“まぜこぜ”の世の中をつくっていくことを目的とした団体です。 4月2日の「世界自閉症啓発デー」の東京タワーブルーライトアップイベントにて、「 Warm Blue Day 2014 」を開催。また、東北在住のアーティストたちの作品や、アールブリュットのコラボ商品などを紹介するアート展「つながる。それから?」を開催するなど、アートや音楽を通してお互いを理解していく活動をされています。
告知だけでスミマセン。[:うぐ:]ではでは、また…
続き▽
以前に(2014年5月16日)、スウェーデン映画『シンプル・シモン』のお知らせさせて頂きましたが、おかげさまでなんとロングラン中です!

アスペルガー症候群の主人公・シモンの眼に映る世界をユーモアたっぷりに描き出した、キュートでハッピーな物語です。
シンプル・シモン公式サイト
http://www.simon-movie.jp/index.html
実は7月12日(土)イベントがあります。
一般社団法人“Get in touch”の理事長としてご活躍中の女優の 東ちづる さんをお招きしてのトークショーです。ご来場をお待ち致しております!
・ ゲスト:東ちづるさん (女優/一般社団法人Get in touch理事長)
・ 日時:7月12日(土) 『シンプル・シモン』21:10の回上映前
※上映前の開催になります。終映は23:00を予定しております。
・ 場所:ユーロスペース
「一般社団法人Get in touch」について
誰のことも排除せず、いろいろな人が、もっと自然に、もっと気楽に、もっと自由に一緒にいられる、“まぜこぜ”の世の中をつくっていくことを目的とした団体です。 4月2日の「世界自閉症啓発デー」の東京タワーブルーライトアップイベントにて、「 Warm Blue Day 2014 」を開催。また、東北在住のアーティストたちの作品や、アールブリュットのコラボ商品などを紹介するアート展「つながる。それから?」を開催するなど、アートや音楽を通してお互いを理解していく活動をされています。
告知だけでスミマセン。[:うぐ:]ではでは、また…
続き▽
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2014-06-27 : 23:52 : admin
# 「花子とアン」
こんにちは、Akikoです。
NHK連続テレビ小説、「花子とアン」見ていますか? ここのところめずらしくわたしは、朝ドラを見ています。
吉高由里子さんの影のあるかわいらしさ(変な表現ですが)と、美輪サマの絶妙なナレーションに、毎日惹き込まれています。
これは、「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子さんの明治・大正・昭和にわたる、波乱万丈の半生を描く物語とのことです。この村岡さんの翻訳歴と言えば、ほかにも「王子と乞食」、「あしながおじさん」、「秘密の花園」、「小公女」と有名な児童文学ばかりですごいんですね。
ドラマの中でも、ものすごく分厚い辞書を丹念にめくっては、手書きで翻訳していく姿が描かれていて、それだけで圧倒されてしまいます。翻訳者に限らず、昔の文化人というのは、今とは較べ物にならないぐらい圧倒的な知性を土台にしていたんじゃないかな…とため息が出ます。
といいつつも、吉高さん演じる花子が、夜が明けるまで翻訳をしているシーンなどを見ると、「そうだよね!」と勝手に親近感を感じてしまいます。・・・締め切り前の夜なべはいつの時代にも変わらないんですね。
今週からいよいよ、「腹心の友」である白蓮と花子の、それぞれの道ならぬ恋の始まりのエピソードに突入しています。黒木華ちゃんの絶妙な受け芝居にも注目ですね。本当に上手い!
花子に励まされながら、翻訳も楽しんでやっていこうと思います。
ではでは、また!
続き▽
NHK連続テレビ小説、「花子とアン」見ていますか? ここのところめずらしくわたしは、朝ドラを見ています。
吉高由里子さんの影のあるかわいらしさ(変な表現ですが)と、美輪サマの絶妙なナレーションに、毎日惹き込まれています。
これは、「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子さんの明治・大正・昭和にわたる、波乱万丈の半生を描く物語とのことです。この村岡さんの翻訳歴と言えば、ほかにも「王子と乞食」、「あしながおじさん」、「秘密の花園」、「小公女」と有名な児童文学ばかりですごいんですね。
ドラマの中でも、ものすごく分厚い辞書を丹念にめくっては、手書きで翻訳していく姿が描かれていて、それだけで圧倒されてしまいます。翻訳者に限らず、昔の文化人というのは、今とは較べ物にならないぐらい圧倒的な知性を土台にしていたんじゃないかな…とため息が出ます。
といいつつも、吉高さん演じる花子が、夜が明けるまで翻訳をしているシーンなどを見ると、「そうだよね!」と勝手に親近感を感じてしまいます。・・・締め切り前の夜なべはいつの時代にも変わらないんですね。
今週からいよいよ、「腹心の友」である白蓮と花子の、それぞれの道ならぬ恋の始まりのエピソードに突入しています。黒木華ちゃんの絶妙な受け芝居にも注目ですね。本当に上手い!
花子に励まされながら、翻訳も楽しんでやっていこうと思います。
ではでは、また!
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2014-06-13 : 23:59 : admin
# 押し売り
こんにちは、Akikoです。
休日に家にいると、たまに営業の電話がかかってきます。
不動産とか、〇〇電話工事とか…「奥さまでいらっしゃいますか?」とか聞いてきます。
わたしは電話があまり好きでないため、受話器を取った瞬間に「いま忙しいので、すみません!(ガシャン)」と、すぐ切ってしまうのですが、そのたびに自分の心の遊びのなさ、というか、もっと言うと、人間のつまらなさを思い、どこか居心地の悪い、ざらっとした気分になります。
何年も前に映像プロダクションで働いていたころ、Tさんという上司がいました。Tさんは映画史に残る名プロデューサーの息子さんで、ご自身もかつて映画プロデュースや舞台制作などにたずさわっていらした方でした。
六本木にあったそのオフィスには、なぜか時々「押し売り」が来ました。
それも、いつも違う若い女性の押し売りで、持って来るものといえば、読書用の携帯ライトとか、お腹を押すとルイ・アームストロングの声でWonderful Worldを歌いだすカエルのぬいぐるみとか、マネークリップとか、アイディア商品というか、要は、無くても全然困らないような雑貨ばかりでした。
その押し売りが来ると、Tさんはいつも「今日は何があるのかな〜」とニコニコしながら、雑貨の説明をひとしきり聞きます。Tさんには「可哀想だから買ってあげよう」という気持ちはひとかけらもなく、「これは買わないでしょ」とか「マネークリップよりはさむ中身(お札)がほしいな」とか、ツッコミをいれます。そして、3個ぐらい値引き交渉をして買ったあと、わたしや他のスタッフにポンとくれるのです。
ユニ〇ットの営業が来たときもあります。爽やかな営業マンが最新のコーヒーメーカーで作ったコーヒーをスタッフ全員にふるまってくれました。Tさんは美味しそうにコーヒーを飲みながら、「青山に大きなビルがあるでしょ〜ウチなんか相手にしなくても全然大丈夫でしょ!」と言って、そのまま追い返していました。営業さんにとっては何の成果もなかったと思いますが、スタッフ全員、営業さんを囲んでコーヒーを飲み、さながらアットホームな茶話会でした。
Tさんはわりとヒマだったというのが大きいと思うのですが、見知らぬ他人との会話のキャッチボールを楽しむその姿に、わたしは勝手に、古き良き江戸っ子の姿を投影していました。
その後 別の事務局で、若い男性スタッフがインターホン越しに押し売り(果物売りでした)を追い返しているのを見て、せめて直接対面してから断ればいいのに…と、ちょっとがっかりしてしまいました。
どこか心のドアを開いていたいな、と思うけれど、Tさんみたいにがっつり断れなさそう、と逡巡するわたし…江戸っ子の道は深いけど、やっぱりあこがれです。
ではでは、また!
続き▽
休日に家にいると、たまに営業の電話がかかってきます。
不動産とか、〇〇電話工事とか…「奥さまでいらっしゃいますか?」とか聞いてきます。
わたしは電話があまり好きでないため、受話器を取った瞬間に「いま忙しいので、すみません!(ガシャン)」と、すぐ切ってしまうのですが、そのたびに自分の心の遊びのなさ、というか、もっと言うと、人間のつまらなさを思い、どこか居心地の悪い、ざらっとした気分になります。
何年も前に映像プロダクションで働いていたころ、Tさんという上司がいました。Tさんは映画史に残る名プロデューサーの息子さんで、ご自身もかつて映画プロデュースや舞台制作などにたずさわっていらした方でした。
六本木にあったそのオフィスには、なぜか時々「押し売り」が来ました。
それも、いつも違う若い女性の押し売りで、持って来るものといえば、読書用の携帯ライトとか、お腹を押すとルイ・アームストロングの声でWonderful Worldを歌いだすカエルのぬいぐるみとか、マネークリップとか、アイディア商品というか、要は、無くても全然困らないような雑貨ばかりでした。
その押し売りが来ると、Tさんはいつも「今日は何があるのかな〜」とニコニコしながら、雑貨の説明をひとしきり聞きます。Tさんには「可哀想だから買ってあげよう」という気持ちはひとかけらもなく、「これは買わないでしょ」とか「マネークリップよりはさむ中身(お札)がほしいな」とか、ツッコミをいれます。そして、3個ぐらい値引き交渉をして買ったあと、わたしや他のスタッフにポンとくれるのです。
ユニ〇ットの営業が来たときもあります。爽やかな営業マンが最新のコーヒーメーカーで作ったコーヒーをスタッフ全員にふるまってくれました。Tさんは美味しそうにコーヒーを飲みながら、「青山に大きなビルがあるでしょ〜ウチなんか相手にしなくても全然大丈夫でしょ!」と言って、そのまま追い返していました。営業さんにとっては何の成果もなかったと思いますが、スタッフ全員、営業さんを囲んでコーヒーを飲み、さながらアットホームな茶話会でした。
Tさんはわりとヒマだったというのが大きいと思うのですが、見知らぬ他人との会話のキャッチボールを楽しむその姿に、わたしは勝手に、古き良き江戸っ子の姿を投影していました。
その後 別の事務局で、若い男性スタッフがインターホン越しに押し売り(果物売りでした)を追い返しているのを見て、せめて直接対面してから断ればいいのに…と、ちょっとがっかりしてしまいました。
どこか心のドアを開いていたいな、と思うけれど、Tさんみたいにがっつり断れなさそう、と逡巡するわたし…江戸っ子の道は深いけど、やっぱりあこがれです。
ではでは、また!
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