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# 南極は巨大な観測器
こんにちは、Wadaです。

池澤夏樹の小説『スティル・ライフ』の冒頭で、主人公の友人が宇宙から到来する粒子と水との衝突で発せられるチェレンコフ光を見ようと、バーでグラスに目を凝らすシーンは非常に印象的です(実際、私はこの後の展開をほとんど覚えていません)。粒子が水や氷の中を光よりも速く通過するときチェレンコフ光を発することが知られており、例えば日本のスーパーカミオカンデという施設は水槽に5万トンの水を満たすことでこれを検出することができるといいます。現在、何と南極大陸をこの検出器に見立てようという壮大な実験が行われているのです(The Economist 2014年 12月6日)。

この粒子が本当のところどこから到来するのか、実はわかっていません。これを探求すべくANITAIII(the Antarctic Impulsive Transient Antenna III)と呼ばれる観測器が気球で吊るされ、南極を恒常的に吹く風を利用して上空35-40㎞を15日ほど飛び、150万キロ㎡の氷を見渡して、超高エネルギー中性微子が氷を通過する際に発するチェレンコフ光を検出するのです。チェレンコフ光が検出されるのは1キロ㎡当たり100年に一度ですが、この分量だと1日40回検出される計算になります。研究者が色めき立つのは、ここで検出される中性微子が世界最大の粒子加速器で作られるものよりも遥かに大きなエネルギーを持っているためです。それは既存の物理法則では説明できないのです。ひとつの可能性として考えられるのは、中性微子が氷に衝突した際に作られる、チェレンコフ光をもたらす粒子の間で、一時的にミニブラックホールが生じているのではないかというものです。このミニブラックホールは、ホーキング輻射(Hawking Radiation)と呼ばれる粒子の放射において生じると考えられており、この輻射が実在するならばブラックホールは粒子を放射するために実際は「ブラック」ではなく、ホーキング博士はノーベル賞級の発見をしたということになります。

しかもこのホーキング輻射の元になる粒子は真空から現われ、それが実在に至るためのエネルギーをブラックホールそのものから得ているということになり、ホーキング輻射は文字通り無から生じていることになります。そうだとすると、これは現代物理学に実り大きな成果をもたらします。

あのチェレンコフ光にこんなに大きな可能性があったとは、驚きです。
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