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# 英国生活日記(33) 「パイ」いろいろ
こんにちは、Yです。過去2回のブログで、イギリスで人気のある家庭料理「コテージ・パイ」と「フィッシュ・パイ」の作り方をご紹介しました。その際、パイ生地を使わないのに、「パイ」と呼ばれていることを不思議に思った方もいるかもしれません。かくいう私もそうでした。「パイ」と言えばアップルパイやミルフィーユのように、バターがたっぷりのさくさくの生地を使ったものだと考えていたからです。しかし、そのような生地を全く使わないコテージ・パイやフィッシュ・パイも、イギリス人にとっては「パイ」の一種なのです(この点は英和辞典にも解説がありません)。さらに言えば、英国で出回っている「パイ生地」は、日本でお目にかかるものよりも遥かに多種多様です。

英語では、「パイ生地」をペイストリー(pastry)と呼びます。BBCの料理サイトでは、なんと7種類のペイストリーを使ったレシピが紹介されています。
・ホット・ウォーター・クラスト・ペイストリー(hot water crust pastry)
・ショートクラスト・ペイストリー(shortcrust pastry)
・パフ・ペイストリー(puff pastry)
・ラフ・パフ・ペイストリー(rough puff pastry)
・フレイキー・ペイストリー(flaky pastry)
・フィロ・ペイストリー(filo pastry)
・シュー・ペイストリー(choux pastry)

中でも最も英国的なのは、ホット・ウォーター・クラスト・ペイストリーです。これは14世紀に英国で生まれたもので、お湯にラードを溶かしながら作るので、このような名前がつけられました。生地は7つのペイストリーの中で最も固く、中の具と汁をしっかりと閉じ込め、崩れにくいので持ち運びもしやすいのが特徴です。ポーク・パイなど、主に肉を具材としたパイに使われます。パイには甘いもの(sweet pie)と塩気のあるもの(savoury pie)がありますが、塩気のあるパイだけに使われるのは、7つのペイストリーの中でこれだけです。

ショートクラスト・ペイストリーは、ホット・ウォーター・クラストよりも「ショート(サクサクとして崩れやすい、の意)」な生地です。イギリス南西部コーンウォール発祥のパスティー(pasty)と呼ばれる半月型の塩気のあるパイは、今では全国チェーンも展開されるほど人気がありますが、これにはショートクラスト・ペイストリーが使われています。ショートクラスト・ペイストリーよりも更に油脂分が多くて軽い食感なのは、パフ・ペイストリーとその類似品です。

パフ・ペイストリーは、日本人にもお馴染みのクロワッサンなどに使われる、バターを折り込んだ非常に軽い食感の生地です。こちらはイギリス人の大好きなおやつ、ソーセージ・ロール(sausage roll)に使われます。ラフ・パフ及びフレイキー・ペイストリーはパフ・ペイストリーほど膨らみませんが、作るのが簡単でありながら、フレーク状の軽い食感を持つのが特徴です。パフ・ペイストリーやフレイキー・ペイストリーは17世紀頃には(おそらく富裕層の間で)普及していたそうです。

フィロ・ペイストリーはギリシャ、東欧、中東の料理に使われる、紙のように薄い生地です。イギリスでは、他のペイストリーほど一般的ではありませんが、料理番組などを見ていると、たまに出てきます。生地を透けるほど薄く延ばすのが大変なので、さすがの料理人も市販のものを購入することを勧めています。

シュー・ペイストリーは日本人にもお馴染みのシュークリームやエクレアに使われるシュー生地のこと。ペイストリーとは小麦粉と油脂分、水分を混ぜ合わせたペースト状のものを指すので、シュー生地もペイストリーの一種として分類されています。イギリス人もシュークリームやエクレアが大好きなようで、スーパーのデザート・コーナーへ行くと必ず見かけます。

このように、英国では一口に「パイ」や「パイ生地」と言っても、色々な種類があります。イギリス人は料理に余り関心がないと言われますが、こと「パイ生地」に関しては、料理やお菓子に合わせて色々な種類の生地が考案・導入されてきたようです。英国に来て、「パイ」と呼ばれるものを食べたら、それがペイストリーを使ったものなのかどうか、使っている場合はどの種類のペイストリーなのかを当ててみるのも面白いと思います。
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