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# アナーキズムはグローバル・テロの起源?
こんにちは、Wadaです

テロへの恐怖が移民排斥運動を推し進めるとの問題は、実は100年以上も前から生じていたようです。1894年2月、あるアナーキスト結社に関わるフランス人 Martial Bourdin が、経度・時刻を司るグリニッジ天文台へのテロを起こしました。このテロは、グローバル・テロリズムの先駆けとされる1890年代のアナーキズムを象徴するものでした。Maya Jasanoff ハーバード大教授(歴史学)はそのうえ、現代の市民的自由と移民の問題も、まさにこの時期が端緒であると指摘します("The first global terrorists", インターナショナル・ニューヨークタイムズ紙、4月30日付)。

アナーキズムが全盛であった当時、アナーキスト達は国家なき自由な社会を実現するため「行為によるプロパガンダ」戦略、要するにテロリズムを採用したのです。クロポトキンは一度のテロ攻撃で「数千のパンフレットをまく以上の」効果があると述べ、米国、フランス、スペイン、イタリア、オーストリア=ハンガリー帝国の大統領級の人物が10年内に暗殺される事態になりました。さらにダイナマイトの進化で大量破壊が可能となり、パリのカフェなど「ブルジョワの社交場」もテロの標的とされたのです。

欧州や米国はこれに対抗してアナーキストの入国を制限するなど警察力を強めたのですが、市民的自由の伝統を掲げ亡命避難所を自負する英国では取締りが比較的緩く、アナーキスト達が集まりました。また多くのユダヤ人が主に東欧から流入していました。そうした中、ロンドンが「外国の都市」へと変わってしまうとの懸念から、反移民運動が激化したのです。外国人によるグリニッジでのテロの影響から、警察はアナーキストの拠点と目される場所などを懸命に捜索しました。しかし実際にはアナーキストの拠点がロンドンにあるとの証拠も、アナーキストとユダヤ人難民との関連を示す証拠も存在しなかったのです。最も大きなテロの脅威は欧州からの難民ではなくアイルランド系ナショナリストに存していた、つまり英国の国内問題がテロを誘発したのでした。

グリニッジのテロはアナーキストによる事件としては英国史上唯一のものだったのですが、アナーキズム自体は後に大きな影響をもたらしました。欧州や米国での移民制限を促進したほか国家間の警察統合を進め、後のインターポール(国際刑事警察機構)の元となる組織を形成させたのです。英国でも1905年、移民の入国制限に関する法案が同国史上初めて成立しましたが、制限の範囲を巡って保守派とリベラルとの間で激しい議論がなされました。それは無差別テロに応じた「今日の議論とまさに同種のもの」だったと Jasanoff 教授は述べています。

テロが今日的な問題ではないことがわかるとどこか安心したような気になりますが、過去から学ぶべきことはないのか、やはり検討する努力が必要です。

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