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# 『それでも夜は明ける』
こんにちは、蓮です。

見たい、見たいと思っていた作品をようやく見てきました。『それでも夜は明ける』−今年のアカデミー賞で、作品賞はじめ主要3部門で受賞を果たしたので、ご存知の方も多いかと思いますが、今日はそのお話を。

前回ご紹介した『プリズナーズ』とは全く違った方向性なれど、見ていて思わず目をそむけたくなるようなシーンも多く、非常にシリアスでヘビーな作品であるという点は共通しています。そして、『プリズナーズ』は突然失踪した少女の父親が主人公でしたが、こちらは失踪した側、拉致されて家族と引き裂かれ、奴隷として生きることになる父親を主人公にしています。

奴隷制度が罷り通っていた時代のアメリカが舞台であり、そしてこのストーリー自体が、実際に突然さらわれてその後12年を奴隷として過ごすことになった自由黒人、ソロモン・ノーサップの書いた回想録に基づく実話ということもあって、その衝撃度や各エピソードの過酷さは『プリズナーズ』を遥かに凌駕するものです。

自由黒人という言葉は聞き慣れない方もいるかと思いますが、アメリカで奴隷制度が維持されていた時代にも、奴隷ではない、自由な米国民として認められた黒人が存在していました。原作者ソロモン・ノーサップは、父親が既に自由黒人だったため、生まれながらに自由な市民としての権利を享受していたにも関わらず、拉致という理不尽な事態をきっかけに、突如、奴隷として生きることを強いられたのです。

映画でも、このことが、見る者に「他人事ではない」という感覚を生じさせ、ともすれば“遠い昔の異国の話”のような気がしてしまう出来事を、我が身に引き寄せて実感・共感する手助けをしているように思います。それと同時に、自由黒人という存在を描くことで、同朋が奴隷として生きている社会のアンビバレンスや、拉致といったきっかけではなく、生まれながらに奴隷とされて、12年どころか一生そのまま生きねばならない人々のそれこそ途方もない理不尽な状況に、目を向けさせることにも成功しているのではないでしょうか。

そうした背景があるからこそ、映画のラスト、『それでも夜は明ける』というタイトルが、二重三重の意味で心に重たく響きます。上映中の劇場はだいぶ少なくなっているようですが、ぜひ多くの方に見て頂きたい真摯な作品です。

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自由黒人の彼だったからこそ、こういった手記が残り、実話の映画化が可能となったのかもしれません。奴隷として育った黒人であったならば文字として残せなかったでしょうから。Toko
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