PROFILE
POWERED BY
    POWERED BY
    ぶろぐん
    SKIN BY
    ブログンサポート
OTHERS

# 英国生活日記(8) 切れない包丁が売れる理由
こんにちは、Yです。海外に引越して、自炊をする場合、皆さんはどんな調理道具を取り揃えますか?必要な道具は、料理のレパートリーによって異なりますが、その中でも、やはり包丁は欠かせませんよね。「普段自炊をしているけれど、包丁は持っていない」という人がいるとは凡そ想像できません。それくらい、包丁は調理にとって重要且つ不可欠なものだと言えます。

ところがイギリスでは、なぜか驚くほど切れ味の悪い包丁が普通に売買されているのです。この包丁、どれくらい切れ味が悪いかというと…
 × 人参など固い野菜を切ろうとすると、途中で突っかかるので、まるで薪割りのごとく手で包丁を野菜に打ちつけた挙句、切れた野菜の破片が回りに飛び散る。しかも、切った断面は、がたがた。
 × 次に皮むき。刃がギザギザなので、いかにも皮むきに不向きに見える上、手を怪我しそう。そのため、試す前に断念させられる。

日本人の感覚で言うと、もはや不良品とさえも言えない、こんなものを「包丁」として売ること自体考えられない、というような代物です。ところがイギリスのスーパーやデパートでは、このような包丁が平然と売買されているのです(もちろんこの種の包丁は、店内で一番安いものですが)。更に驚いたのは、この切れない包丁が学生だけでなく、(イギリスらしく)余り料理にこだわらない一般家庭でも利用されているということです。一体どうしてこんな包丁が平気で売買されているのでしょう??

イギリス滞在中、私はキッチン共有のアパート(現地では「フラット」と呼ぶ)に住んでいました。キッチンは、ドイツやスペインから来た留学生と共有していたのですが、私以外の学生は皆、この切れない包丁を、何の不満も漏らさずに使っていました。一体全体、どうしてあんな包丁を平気で使っていられるのかと思って観察していたところ、その答えは、イギリス(そして広くはヨーロッパ)の食文化にあるようだ、という結論にたどり着きました。

端的に言うと、イギリス(及びヨーロッパ)で一般的に作られる料理には、切れ味の良い包丁が必要ない、ということです。それは彼らが、
 〇 比較的柔らかい食材(肉、キャベツ、パプリカ、トマト、マッシュルーム…)を調理することが多いこと
 〇 固い食材は細かく切らずに、丸ごと又はぶつ切りで調理すること
 〇 細かい作業には、専用の器具を使う(そのために、にんにくクラッシャーやフードプロセッサーのような様々な調理器具が開発される)こと
によると考えられます。実際、上記の包丁は、肉やパプリカなど、柔らかい食材をあくまで大雑把に切るのには十分なのです。玉ねぎがぎりぎり、といったところでしょうか。

もちろん、このような切れない包丁がイギリスの全ての家庭で使われているわけではありません。少し料理好きの家庭のキッチンには、5-6本入りの立派な包丁セットがケース入りで飾られています(実際に全て使っているかどうかは疑問)。これは、日本にある三徳(万能)包丁のようなものが普及していないためです。イギリスでも「サントク・ナイフ」という名称で製造販売されているのですが、余りメジャーではありません。そのため、いざ包丁を買おうとしてお店に行くと、?安物の切れない包丁か、?やたらと立派な包丁セットか、?大小様々な形の単品コーナーをさまよった末に好みのものを探し出す、という3つの選択肢に直面することになります。サントク・ナイフは、単品コーナーに隠れているのですが、少し割高だったため、私は中位の「コックのナイフ(cook’s knife)」を購入しました。

ちなみに、上記の切れない包丁、刃がギザギザなため、唯一パンだけは、日本の三徳包丁よりもよく切れます。そう考えると、日本では決して売れないと思われるこの包丁も、主食を優先した、欧米型の格安万能包丁と言えるのかもしれません。

Y : comments (x) : trackback (x)