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# 『蘭学事始(らんがくことはじめ)』が読みたい(8)
二週間ぶりの『蘭学事始』です。

「誠に艪舵なき船の大海に乗り出せしが如く、茫洋として寄るべきかたなく、たゞあきれにあきれて居たるまでなり。(本当に、艪も舵もない船で大海原に出ていったように、見当もつかない状態でどうすることもできず、ただ茫然としていた。)」

杉田氏は『解体新書』の翻訳を開始した当初の様子を、このように書き記しています。ここでわたしは、最近似たような目にあったことを思い出しました。

なぜかわたしは、ちょっとした用事でイスラエル政府のサイトを閲覧しなければなりませんでした。実は政府公式サイトには英語のページがあるのですが、読み進んでいくうちにやはりというか当然というか、ヘブライ語のページにたどりついてしまいました。

「なんじゃこりゃ。」

感想はこれに尽きます。解読を早々に断念し、英語のページに戻るしかありませんでした。人生で初めて、ヘブライ語が読めずに困った瞬間です。

しかし杉田氏らは、そんなことで作業を放棄するわけにもいきません。オランダ語の助詞やら基本的な単語やらを一通り理解できるようになると、そこからは大量の謎かけです。

「『ウェインブラーウ』は目の上に生えている毛である。」

『ウェインブラーウ』=眉毛です。

「鼻は『フルヘッヘンド』しているものである。木の枝を切ればその後は『フルヘッヘンド』となり、庭を掃除すればゴミが集まって『フルヘッヘンド』となる。」

『フルヘッヘンド』=うずたかい、という意味です。これは、有名な一節ですね。

こんな調子で最初は大いに苦労し、一日かかって一行も理解できなかった日もあったようです。それでも一年ほどたつとだんだんとスムーズに訳出できるようになり、一日に十行ほども読めるようになっていったということですから、その努力と根性には本当に頭が下がります。

さて、ここまで8回にわたってお送りしてきた「『蘭学事始』が読みたい」ですが、ここまでが本編上巻となります。次回から、下巻を読み進めていきたいと思います(わたしが使っている岩波文庫版には両方収録されています)。まだ続くのか・・・

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